アルプスの少女ハイジの言いたい事

“負けるが勝ち”
“弱い地方の強み”
頭の良い有吉君は、物を力学的に考え、進む方向を見つけて行きます。
そうしないと、地方のグルノーブルは、アートマーケットの中心、パリには勝てないからです。
私は、全生徒達の投票でグルノーブル、ボザールの講師となりました。
ここでは、世界中のだれでも講師の対象とされ生徒達の投票結果で決まります。
そういった訳で、講師となった私は、その恩返しとして、どうしても学生達にアーティストとしてのデビューのきっかけを作ってあげたく、作戦を考えました。
お金が掛からず、効率的にパリのマーケットやジャーナリスト、クリティークに見てもらうチャンスを作る。
それは、“展覧会のハイジャック”でした。
グルノーブルには、あのエッフェルが1900年にパリに作った建物を解体してグルノーブルに運び再建した国立現代アートセンター《ル・マガザン》がありました。又ここには、世界中から選抜されたキューレター10名程のトレーニング学校、“エコール・ドゥ・マガザン”が併設されていて、この時、日本からはこの学校に沼田美樹さんが、多分、日本人始めての学生として在籍していました。ここの学生達は、かなりの実績のある人達でしたが、キューレションの日本での実績を持たない沼田さんは、ディレクターの独断で才能を買われ特別入学になったと聞いています。
このマガザンで名前は忘れましたが、大規模な展覧会のプログラムがある。との情報を聞きつけ、これだとパリから多くのジャーナリストや美術関係者が来る。
“誰でも、旅行気分の時は、心がオープンになり心の垣根を取り外しやすい。そこが、地方の強み”
と読んだ私は、この展覧会へのハイジャック、そこを学生達の発表の場として与える。という企画しました。
しかし、本当に断りなしにハイジャックすると、観客にマイナスのイメージを持たせる可能性も有ります。
そこで、“同じ小倉出身じゃーん!お願い!”とか言って美樹ちゃんを諜報員に。
CIA美樹ちゃんは、展覧会の配置場所などをこっそり教えてくれ、それを元にこちらは作戦会議。
展示の作品などに悪影響を与えず、且つ効果的にこちらの作品を印象つける。
帰りのTGVの中で記憶として強く残る。など、
めちゃ、大まか。
我々、ハイジャッカーは、この設計図を元に、各々、最高のレベルの頭を絞って作品案を練りだし、みんなで協議。
実際、雰囲気は授業というより戦争ゴッコ。
で、この練りに練った作戦図を相手側マガザンに企画提出して、了承を得、いよいよ実行。
多分、パリや日本では、美術館側はこういった企画は、受け付けないと思いますが、そこが田舎の強み。で、結果は大成功!!
マガザンの入り口あたりに作品を集めインスタレーションをしたのは、入り口を入ったすぐ左側にバーカウンターがある事。
オープニングパーティーの間、多くの観客はバーカウンターの近くに陣取り、カウンター側に向いている。
その人達にとってハイジャッカー達の作品は左手に観る事になる。
人間は、心臓を中心に左に回転する事が自然である。
ベットでは男性から見て女性は左手に寝た方が成功率が高い。
まんまと罠にかかりました。
CIA美樹ちゃんから入手した、配置設計図から、この展覧会の弱みを見つけていたのです。アーティストはこういう細かい所まで本能的に計算して創造しますが、キュレーターはその様な繊細な部分は見えないのか?この様なポイントが最も大事なのに。。と心でニヤニヤ勝ち誇った私がそこにはいました。
ここでもムサビ時代に習得したベット学が役にたちました。ソフィア出身のCIA美樹ちゃんは、そこの所の勉強不足だったようで、説明しても“フーン”
”ソフィアでは、そんな大事な事も教えないのか?”
この時のハイジャック展覧会を契機に3人のアーティストが注目されまして、国際展への出品要請が有りました。
この時の作品で、今だに強い印象を引きずっている作品があります。
この女性は、何か何時も暗く、自閉症ぎみな感じを与える人でしたが、マガザンの入り口、かなりの高さの街灯の所に人間大ほどの蛾の蚕の様な作品を作ったのですが、ここの中に彼女が入っていたのです。この蚕は街灯の灯火にうっすらと透けて見え、時たま体の位置を変える事で人が居ると認識出来るのですが、日頃の彼女を知っている私には、彼女が必死に自分の存在を分かってもらおうと訴えている、かすかな叫び声の様に思えました。
もしかしたら、パリから来た美術関係者もアルプスに囲まれ自閉症ぎみにならざるえないその地域性と学生達の作品をオーバーラップさせ、その閉鎖性を打ち破ろうとする学生達の必死の叫びが、アルプスの山々に木霊している様に帰りのTGVの車中で繰り返し思い出させたのかも知れません

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